神戸酒心館

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2月のうまいもん/酒粕

今月のうまいもんさかばやし

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田辺聖子著「芋たこなんきん」にちなんで新たな酒粕料理が

 毎年2月から3月までは、酒粕プロジェクトの実施期間です。10年ぐらい前には、酒粕文化が薄れ、関西でも粕汁を作る家庭が少なくなっていました。加えて、日本酒の生産量の減少や製造方法の変化により酒粕の流通量が減少し、市場に出回る酒粕が少なくなっていきました。「日本一の酒どころ」と言われる灘五郷でさえ、酒粕文化が薄れつつありました。関西では、その勿体ない精神よろしく、勿体ない精神で日本酒造りの副産物である酒粕を食材として料理に生かしてきました。新酒が出る季節になると、消費者は日本酒と共に酒粕を買い込んで、家庭で粕汁や酒粕鍋を作ったり、火鉢でザラメをのせた酒粕を焼いたりして味わったものです。それが外国料理などの影響も加味して徐々にその文化が薄れて行ってしまったのです。この状況を打破すべく「灘に根づく酒粕文化の火を消してなるものか!」とばかりに神戸酒心館が旗振り役となって酒粕プロジェクトを立ち上げ、酒粕文化の復権を願って毎冬この時季にフェア企画を行っています。年々その気運も高まり、今では関西圏の多くの飲食店や食品製造業者などが参加。今や酒粕ブームまで巻き起こっており、その成果によって和食のみならず、フレンチ、イタリアン、中華、スイーツ、バーと様々なジャンルで酒粕料理をメニュー化するシーンが増えています。
 文化の復活は、何もプロばかりがやるからできるのではなく、一般人の参加も不可欠。それも次代の担い手となる若い人達が酒粕の美味しさに触れてもらわねば成立しません。たまたま酒粕プロジェクトの企画者である筆者が、大阪樟蔭女子大学で教壇に立っている関係もあってフードスタディ専攻の学生達に授業(フードメディア演習)の中で酒粕プロジェクトの参加を促しています。
 同授業を受講しているのは、学芸学部ライフプランニング学科の三年生。彼女らたちは、授業内で流行づくりを学び、その一環として酒粕プロジェクトを体験します。関西に古くから根づく酒粕文化を学んだ後、自らの発想で酒粕オリジナルメニュー作りに挑戦するのです。幾度ものブレストの結果から生まれた企画を具現化し、酒粕を用いた新たな料理を生み出して行きます。
 12月上旬のプレゼン大会を経て最優秀賞に選ばれたのが、瀬川佳奈美さん、植村文音さん、窪田歩香さん、高橋実来さんの四人が考案した「酒粕稲荷と南京天ぷら“>酒粕稲荷と南京天ぷら」。大阪樟蔭女子大学が作家・田辺聖子の母校にあたることから、彼女たちは田辺聖子の著書「芋たこなんきん」になぞらえ、酒粕料理を企画しました。酒粕(粕汁のベース)でうす揚げを煮て、その中に寿司飯を詰め込んで仕上げます。寿司飯も熟成した酒粕で造った赤酢であるを用いている点も特長です。その具材としてタコの柔らか煮・里芋・人参・椎茸などを入れて上品な味になるよう工夫しています。「芋たこなんきん」が考案のベースにあることからタコの柔らか煮と里芋を具材にしたそうです。「カボチャを寿司飯に入れるとどうしても甘めになるので、具材として使わずにカボチャで酒粕を挟んだものを揚げて稲荷寿司に添えて、『芋たこなんきん』を表現した」そうです。さらに松蔭学園のカラーが緑色であることも考慮し、大葉の天ぷらを載せて「緑」を表現しています。
 この女子大生が考えた新酒粕料理は、平日限定(要予約)で「さかばやし」にて2〜3月の2カ月間提供することになっています。この他、粕汁や酒屋鍋はもとより、単品料理や会席料理の一部など、様々な「福寿」の酒粕料理を提供しますので、ぜひ2月から3月にかけては、酒粕プロジェクトをお楽しみください。

(文/フードジャーナリスト・曽我和弘)
2024年2月

料理長おすすめ「酒粕」の一品
■帆立貝の酒粕和え  880円
■酒粕ちー寿(チーズ)      1,100円
■豚肉と白菜の酒粕煮       1,000円
■粕汁小鍋            1,500円
■粕汁おでん           1,300円
※おすすめの一品は予約にて承ります。価格は税込価格です。
※写真はイメージです。