神戸酒心館

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4月のうまいもん/神戸元気サーモン

今月のうまいもんさかばやし

「福寿」の酒粕を餌に用いて育てた神戸の新名産

 日本全国でご当地サーモンが盛んで、そのブランドの数たるや、80近くもあるそうです。神戸では、須磨区の妙法寺川河口域で育てている「神戸元気サーモン」もそのひとつ。愛知県の淡水から約400gのホウライ系ニジマスを持って来て須磨の海(妙法寺川河口域)に作った海上の生簀に放ち、養殖しています。この「神戸元気サーモン」の養殖を行なっているのは、神戸市漁業協同組合に属する東須磨底曳き会の漁師の方々。奥谷知生さん・幸内義宜さん・西澤正一さん・山崎貴伸さん・福田一さん・藤岡琢二さんの6名は、東須磨サーモン部会を立ち上げ、6年ぐらい前から「神戸元気サーモン」の養殖に取り組んで来ました。
 「神戸元気サーモン」が、全国に点在するご当地サーモンと違うのは、ニジマスの餌に「福寿」の酒粕を用いている点。当初は、海面トラウトEPを一日3〜4回餌として与えて育てていたのですが、彼らが神戸らしさをどうにかして出したいと考えたのが、酒粕を使用することになったきっかけだったそうです。「神戸のイメージをつけたくて初めはパンくずを与えようかと考えたのですが、調べてみると、パンにはバターなどが含まれているため魚の生育には不向きだとわかりました。そこで、日本一の酒どころ・灘から出る酒粕を餌にしてみてはどうだろうかと『神戸酒心館』に相談したのです」と奥谷さんは話します。2022年11月から酒粕を餌にして育てたところ、その翌年(2023年)の出荷分には顕著な差ができました。酒粕を与えたものと、そうでないものの二つを育てたらしいのですが、酒粕を与えたニジマスは、身が鮮明なオレンジ色になって締まっていたそう。その上、あっさりした味わいになって独特のマス臭さもなくなったと言います。その結果を踏まえて「東須磨サーモン部会」では、酒粕を与えたニジマスを増やし、餌を与える時期も考えて養殖したとの話でした。
 そもそも酒粕は、日本酒造りでできる副産物。もろみを搾って残った固体が酒粕なのですが、近年の研究では、酒粕が身体にいい影響を与え、高血圧や糖尿病の予防にもつながるとの報告が医学界から聞こえています。人にとってもいいのですから、ニジマスにもいいようで、それが身の締まり方や脂っぽくない味わいに表われているのかもしれません。「東須磨サーモン部会」では、11月になると解体していた養殖いかだを組み立て、妙法寺川河口域に生簀を浮かべます。そして水温が18度以下になる頃を見計らってニジマスを放つのです。養殖期間は、11月から4月まで。水温が20度に達すると、養殖には適さない環境になるらしく、いかだを撤去して5月にはその作業を終えます。11月から育てたニジマスが大きくなって出荷できるレベルまで育つのが3月から4月。この頃が、「神戸元気サーモン」の旬と呼べる時期です。
 さて、「さかばやし」では、地元の漁業ということで「神戸元気サーモン」を応援すべく4月に「東須磨サーモン部会」より直接仕入れて様々な料理で提供します。焼物などにも使用しますが、せっかく新鮮な須磨の海の幸が手に入るのですから、造りやしゃぶしゃぶと生感覚の料理で提供しようと考えています。4月23日(火)夜の「旬の会」では、新鮮な「神戸元気サーモン」を様々な料理に仕立てた会席料理をご提供する予定です。また、4月の会席料理や一品料理でも「神戸元気サーモン」をお楽しみいただきけます。ぜひこの機会に新たな神戸名産の「神戸元気サーモン」をご堪能ください。

(文/フードジャーナリスト・曽我和弘)
2024年4月

料理長おすすめ「神戸元気サーモン」の一品
■神戸元気サーモンオランダ煮         1,000円
■神戸元気サーモンの炙り(土佐酢ジュレ掛け)1,100円
■神戸元気サーモンのお造り         1,400円
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※写真はイメージです。