6月のうまいもん/泉佐野産水茄子

産地直送の水茄子を、新たな調理でおもてなし
初夏の到来は、水茄子の旬を告げる季節でもあります。水茄子は、泉州らしい野菜で、水分を多く含んだ瑞々しさが売りです。一般的に茄子類は灰汁が強くて生食には不向きな野菜ですが、泉州の水茄子に限っては灰汁がほとんどなく、皮も薄く、実も柔らかなために昔から生で食していました。室町後期に書かれた「庭訓往来(ていきんおうらい)」を紐解くと、すでに水茄子のルーツと呼ばれる澤茄子が出て来ており、泉州の地域で古くよりそれがあった事を物語っています。その発祥は、日根野澤村とも、上之郷村とも伝えられているようです。泉佐野を歩くと、年配者からは「日根野小豆に、上之郷茄子」という言葉が聞かれます。これは品種というよりは、産地と品質を示したフレーズで、古くから名高かった在来の素材を諺(ことわざ)のように言い表したものだと思われます。水茄子は、江戸期には人の手によって本格栽培が行われていたそうですが、その頃は調理に用いる野菜というよりは、むしろ果物に近い存在で、桃やすもものようにそのまま食べる素材として活用されていました。梨にも近い爽やかさと水分が暑い季節にぴったりに映ったのではないでしょうか。今でも全国には200種近い茄子類があるそうですが、生で食せるのは泉州の水茄子と新潟の十全茄子ぐらいらしいのです。「江戸時代における和泉地方の農事調査」では、水茄子を栽培しているのは、今でいう堺・岸和田・貝塚・泉佐野の海岸に近い川沿いの村で、「本家の村を離れると木茄子に化ける」とされ、大和川を越えると育たないといわれていました。どうやら果形・果色・肉質が代わり、門外不出の茄子として地域に根づいていたようです。最近は高知や徳島・千葉などでも水茄子が栽培されていますが、泉佐野の農家で聞くと、「顔つきは似てても別物扱い」のようで、「浅漬けにして漬け込んだ時の味や瑞々しさは同じようにならない」と指摘していました。やはり風土や気候がその味を決定づけているように思われます。
泉佐野市は風土に恵まれ、水も豊富にある事から泉州地域でも評価の高い水茄子が産される地域として知られています。「さかばやし」の大谷直也料理長は、泉佐野産(もん)の水茄子に惚れ込んでおり、毎年6月になると、泉佐野の辻農園・辻裕男さんより採れたての水茄子を送ってもらい、様々な料理に活用しています。そのため「包丁を入れただけで泉佐野産かどうかわかる」とまで断言するくらいなのです。大谷料理長は、泉佐野市農林水産課が行う「泉佐野産(もん)普及促進事業」にも参加し、水茄子を使った料理レシピを市役所のHP内に公開しています。現在、泉佐野市では全国ブランドに成長した水茄子を新たな分野に導いて魅力を発信しようと、水茄子が多彩な料理に活用できること提案しています。大谷料理長はじめ関西の有名料理人がこぞって同市のHP内で公開しているのは、その事例づくりの一環。元来、水茄子はその特徴から生で食すか、浅漬けにして流通するのが一般的でした。ところが有名料理人達が検証してみると、調理素材にも向いている事がわかりました。特に天ぷらには長茄子より向いており、実の中にある多くの水分が油の侵入を防ぎ、揚げても長茄子のように重たくならないのです。大谷料理長は、そんな水茄子の特性をいかすべく、天ぷらはもとより、酒粕グラタンに用いたり、昆布締めした水茄子を牛ロース煮と合わせたり、時にはガスパチョ風にしたりと、あらゆるパターンで調理しています。その結晶が6月に提供される「さかばやし」の会席料理の品々で、そこには泉佐野産水茄子の新たな魅力が見え隠れしています。また、一昨年来から夏の季節メニューとして売り出している「水茄子蕎麦」は、ぶっかけタイプのそばに生の水茄子を漬けた、今までありそうでなかった料理。これが爆発的人気で、「さかばやし」の夏の名物にまで成長しました。
ところで「さかばやし」では、6月のうまいもんに泉佐野産水茄子を選定し、会席料理の一部や一品料理に水茄子を用いた料理を提供します。それらは泉佐野市内の水茄子農家から毎日のように直送される採れたて素材。瑞々しく、フレッシュで鮮度抜群のものです。産地(泉佐野)の恵みが一杯詰まった水茄子料理をぜひともこの機会に味わってみてはいかがでしょうか。

(文/フ―ドジャーナリスト・曽我和弘)
料理長おすすめの一品
【今月の水なすは泉佐野農家 辻裕男さんが育てた水なすを使用しております】
■泉佐野産水茄子のガスパチョ 600円
■泉佐野産水茄子の揚げ出し 700円
■泉佐野産水茄子の天婦羅 780円
■泉佐野産水茄子と魚素麺の旨出汁掛け 850円
■泉佐野産水茄子と尾羽毛の酢味噌掛け 900円
■泉佐野産水茄子と黒毛和牛のしゃぶすき小鍋 2,900円
※おすすめの一品は予約にて承ります。価格は税込価格です。
