5月のうまいもん/神戸産しらす
神戸がしらすの名産地だって知っていますか?
外国の食文化やスイーツなどオシャレな印象が漂う神戸には、潮の香りがする漁業のイメージが薄いのかもしれません。ところが大都市にも関わらず漁協(神戸市漁業協同組合)は、歴と存在しますし、長田や須磨、垂水でも底曳き網漁などを盛んに行ってもいます。神戸の漁業の中で他地域を凌駕するほどメジャーなのがしらす漁でしょう。全国的に見てしらす漁で有名な地域は、①兵庫県②愛知県③静岡県の順。全国の約3割近くのしらすが兵庫県下で獲れるらしく、淡路島や神戸沖が殊に有名です。グルメに名高い「かながわブランド」の湘南しらすもよく耳にしますが、実は漁獲高はごくごく少ないのが現状。某食通によると、その味とて神戸産しらすの比ではないと言います。
そもそもしらすとは、カタクチイワシの稚魚を指します。シロウオやシラウオと混同されますが、それとは全く別物なのです。よく「しらすとちりめんじゃこの違いは?」なんて聞かれますが、これは同じ手のもの。含有する水分率で定義されており、水分率の多い順から生しらす→釜揚げしらす→しらす干し→ちりめんじゃこと呼んで差別化しています。漁港では、しらすを水揚げして来ると、加工場へ運び、生しらすを塩水で煮沸します。水分率が90〜80%のものを釜揚げしらすと呼びます。さらに天日や機械で乾燥させ、水分率が70〜65%になるとしらす干しに、もっと水分率を落とす(50〜35%)とちりめんじゃこになるのです。
しらすは、体に色素が乏しく白っぽい(透明な)稚魚。漁獲しても足が早い事から大半が加工処理されて市場に出ます。その分、新鮮な生しらすは珍しく、それを用いた生しらす丼などが人気を博すのも理解できます。
冒頭にしらす漁は兵庫県が産地だと書きましたが、その中でも岩屋港(淡路島)と神戸市内の各漁港がしのぎを削っていると言ってもいいでしょう。元来、瀬戸内(兵庫県)は栄養豊富な海で、海流と六甲山系から流れ込む地下水が混ざり合って豊かな漁場で形成しています。中でも神戸沖はプランクトンが発生しやすく、しらすの餌がいっぱいあるのです。そんな豊かな漁場で育まれた「神戸のしらす」は、味も秀逸。タンパク質やビタミンD、カルシウム、マグネシウムも豊富に含む小魚として名を馳せて来ました。
この神戸産しらすの中でも最近注目を集めているのが「夜明けのしらす」。神戸沖にはしらすを求めて大阪からも漁師がやって来ますが、神戸の漁師だけに許されているのが、夜明け前のしらす漁です。朝4時から網を入れてプランクトンを食べる前に獲ります。まだ胃の中にその日の餌が入ってない状態で獲るので身の透明度は高く、茹でても黄色くならないようです。そんな夜明けのしらすを水揚げ後すぐに神戸市漁協の加工場で釜揚げするために旨みは抜群。他産地をも凌ぐ味になります。そんな神戸産しらすを求めて県外からも業者が買いに来る程で、それくらい夜明けのしらすが脚光を浴びているのがわかるでしょう。神戸では、「夜明けのしらす」の冊子を作ったり、EAT LOCAL KOBEが開催するマーケットに出店したりしてその知名度アップを図っています。
ところで「さかばやし」では、この地元の名産にいち早く着目し、「5月のうまいもん」としてテーマ食材に選出。会席料理の一部や一品料理として神戸のしらす品々を提供いたいます。ゴールデンウィーク明けには、しらす漁も解禁され、「夜明けのしらす」も入荷予定になっています。生のしらす丼を提供したり、釜揚げしらすもご用意していますので、「神戸のしらす」をぜひこの機会にお召し上がりください。
(文/フードジャーナリスト・曽我和弘)
2025年5月
料理長おすすめ「神戸産しらす」の一品
■神戸のしらす佃煮 550円
■神戸のしらすと(神戸旬菜)小松菜のお浸し750円
■神戸のしらすおろしポン酢 750円
■神戸のしらすと太もずく酢 780円
■神戸のしらす冬瓜和え 850円
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※写真はイメージです。