2月のうまいもん/酒粕

女子大生が創作した和風餃子が話題に
2月になると、恒例の酒粕プロジェクトが始まります。同プロジェクトは、食文化の多様化などで希薄になった灘の酒粕文化を復活すべく始まったもので、今年で12年目。毎年2~3月は神戸を中心に関西圏の飲食店などが参加して「福寿」酒粕を用いて新作酒粕料理をメニュー化して競います。「さかばやし」も当然そのうちの一店舗として参加していますが、「さかばやし」の特徴は、大阪樟蔭女子大学の学生とコラボした作品をメニュー化して提供する事でも知られています。若い子人にとって「昭和」が目新しく映るように、昔からある酒粕も新たな食材や調味料として捉えながらこれまでなかった酒粕料理を彼女達は具現化してくれました。同大学でフードスタディを専攻する三年生は、酒粕プロジェクトの企画者でもある私の授業「フードメディア演習」で酒粕の効果や酒粕がもたらして来た関西の食文化について学び、全く新しい酒粕料理創作に挑みます。ブレストと試作を繰り返す事でそのレシピづくりを行い、神戸酒心館の経営者にプレゼンテーションを行います。そこで選ばれた作品は、1月27日の発表会でマスコミ陣を前に披露されるばかりではなく、2~3月の「さかばやし」のメニューとして提供されます(要予約)。単なる授業内での作品に留まらず、実社会と結びつく点が彼女達のやる気を唆るようです。
今年メニュー化を勝ち獲ったのは、長野由依さん・松波鈴奈さん・宮本朋花さん・牛山美咲さんの四人が考えた「恵の福包~湯葉と酒粕の慶び~」です。これは中国での餃子が献上品だった事に端を発して創作したもの。中国には焼き餃子はなく、餃子といえば水蒸子か、蒸し餃子である事から、彼女らはその原点回帰を含めた餃子の和風化を考えました。よく居酒屋などで和風餃子を目にしますが中華の餃子の域は脱しておらず、完全な和風化になっていないものが多いようです。彼女らが創作した「恵の福包」は、和素材である湯葉を用い、酒粕を含めて作った餡をそれで包んだもの。その包み方も奉書風にし、熨斗のようなデザインを大根と人参で施して和の献上品をイメージさせました。
若い子人達は、SDGsの観点から日本の勿体ない精神をよく学んでいるために、この料理にもそんな印象づけを行いました。コンセプトは【廃さず、活かす。素材がめぐる】で、中身の餡をおから(豆腐の余り物)、酒粕(清酒の余り物)、ミンチ肉(豚肉の余り物)で作り、味わいを持たせる意味で海老を、食感を持たせる点から蓮根を使って上手く構成しています。つまりかつて献上品だった餃子の理念に、調理の際残りがちになりやすい材料で中身を作り、逆発想(SDGs)を取り入れて純和風調を図ったのです。そんな奉書風にアレンジした餃子を酒粕・醤油・みりん・味噌で合わせたタレに漬けて食べると純然たる和の一品に。また酒粕酢である「三ツ判山吹」に漬けると中華風の味に変身するという摩訶不思議な料理を生み出しました。ちなみに“福包(ふくつつみ)”とは、江戸初期に水戸藩で儒学を教えていた明(中国)の朱舜水が水戸光圀に餃子を献上した際につけた料理名。そんな歴史的エッセンスも加えながら創作した所に女子大生の学習が垣間見られるのも面白い点でしょう。
ところで「さかばやし」では、2~3月のうまいもんに酒粕を選定し、大阪樟蔭女子大学の学生とコラボした「恵の福包~湯葉と酒粕の慶び~」を始め、様々な酒粕料理がメニュー内を彩ります。勿論、名物の粕汁や酒粕仕立ての「酒屋鍋」もありますので、ぜひ寒の時季には、「福寿」酒粕を使った料理で身体も心も温まってみてはいかがでしょうか。
(文/フードジャーナリスト・曽我和弘)
2026年2月
料理長おすすめ「酒粕料理」の一品
■酒粕酢味噌 沼田和え(浅利、赤蒟蒻、薄揚げ)850円
■酒粕ちー寿(チーズ) 880円
■帆立貝の酒粕和え 1,100円
■粕汁おでん 1,400円
■粕汁小鍋 1,600円
※おすすめの一品は予約にて承ります。価格は税込価格です。
※写真はイメージです
大阪樟蔭女子大学学生考案の一品
■恵の福包~湯葉と酒粕の慶び~ 1,500(円)
(豚ミンチと酒粕の湯葉包み)
※3日前までのご予約が必要です。
