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9月のうまいもん/おじろの夏鹿

おじろ鹿のしゃぶしゃぶ01c

「9月にメニュー化するのは理由(わけ)がある」
 
 ここ数年、9月になると「さかばやし」では、兵庫県香美町小代(おじろ)の鹿肉を提供しています。これは兵庫県但馬地区の獣害問題に端を発したもので、畑を荒らす鹿や猪に頭を痛めた地域の人達がこれらを捕獲して食用にできないかと考えたために、少しでも協力できればと献立に取り入れているからです。ジビエと聞くと、苦手に思う方もおられますが、小代から送られて来る鹿肉は物凄くきれいで独特の臭みもないために毎年なかなかの好評を博しています。「鹿肉ってこんなにクセがなかったのか」とか、「赤身であっさりしているのでヘルシーな感じ」といった声も多く聞かれるほど。フランス料理ならともかく、日本料理で鹿肉を味わえるとは珍しいとばかりに、このところ9月の「さかばやし」の名物に成長しつつあります。
 前述したように鹿肉は、ジビエ食材にあたります。ジビエとはフランス語で、狩猟で得た野生鳥獣の食肉を意味します。日本では猪が有名で、その代表格としてボタン鍋が挙げられるのですが、欧州では鹿はもとより山鳩やキジ、カルガモ、野ウサギもよく料理に用いますし、フランスにいたっては狩猟禁止のタジギやヌートリア、ハクビシンという珍しい動物も食べることがあるのです。こういったジビエが苦手な人達は、概して硬いとか、臭いとかいう理由で食べなくなっていますが、その原因の一つに挙げられるのが鉄砲の玉の当たり所の悪い事によるものが多いそうです。ジビエは主にハンティングによって獲られます。動いている動物を撃つわけですから、急所をはずし、苦しませることも多々あるでしょう。もがき苦しむと、血が回って肉は臭くなってしまいます。その手のものを食材に利用すると、いくら調理しても臭みが取れず、料理自体の味を損ねてしまうのです。
 では、なぜ「さかばやし」で仕入れている鹿肉は臭みがなく、美味しく食べられるのかといえば、その捕獲に要因があります。獣害被害を防ごうと、小代の人達はNPO法人「峰鹿谷(ほうろくや)」を数年前に設立しました。ここでは農作物を荒らす鹿を罠に仕掛けて捕獲します。捕らえた鹿は急所を撃つことで苦しまなく処理するそうです。24時間以内に地元の処理場へ運んで、そこで内臓を取って血抜きをし、肉のみを冷蔵庫内で吊り下げて保管します。このような処理の仕方と、時間の速さが臭みのない鹿肉を作り上げています。「さかばやし」では、そんな鮮度のいい鹿肉を小代の「峰鹿谷」から直送してもらって9月の会席料理の一部や一品料理に用いているのでいい鹿肉が提供できるというわけです。
 ジビエと聞くと、冬の印象が強いですが、「さかばやし」が9月に提供するのは理由があります。「さかばやし」の鹿肉献立化は、少しでも獣害に苦しむ農家に協力をしたいという理由から。鹿が畑の産物を喰い荒らす8月に捕獲する意義があるのです。夏場に農作物を荒らされると、秋の収穫が量に影響します。鹿肉の消費量をこの時季に増やすことで少しでも有意義に鹿肉を提供する、そんな狙いも含まれています。それと肝心なのは、鹿の特性上、唯一8月にだけ肉に脂が蓄えられます。つまり赤身肉とはいえ、少しでも脂を含んでいる方が旨く感じるので、あえて8月の鹿をと注文しているのです。肉は魚と違ってすぐに使用することはないので小代の管理場で熟成し、それを9月になって提供してもらいます。こんなことから「さかばやし」では、9月のうまいもんとして1ヵ月間だけ献立化しています。ぜひこの機会に小代の夏鹿を「さかばやし」で味わってみてください。

(フードジャーナリスト・曽我和弘)
鹿料理
 

料理長おすすめ「おじろの夏鹿」の一品
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