神戸酒心館

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【第137回酒蔵文化道場】運動と健康づくり(2024.5.11)

神戸酒心館酒蔵文化道場ホールイベント


≪酒蔵文化道場とは?≫

第137回
酒蔵文化道場

≪題目≫
運動と健康づくり
―三日坊主からの卒業を目指して―

≪語り手≫
神戸大学大学院 人間発達環境学研究科 教授
神戸大学ウェルビーイング先端研究センター
原田 和弘 氏

≪内容≫
健康づくりのための生活習慣の1つとして、運動にご関心をお持ちの方も多いと思います。
一方で、運動は、日記や早起きなどとともに、つい三日坊主になってしまう生活習慣の代表格。
運動と健康との関係についてだけでなく、運動を無理なく続けるためのポイントについて、心理学・行動科学の研究成果を中心にお話いたします。

≪開催について≫
◆2024年5月11日(土) 16:00〜
◆料金:参加費2,000円
◆講演の後、講師を囲んでの懇親会がございます。(要予約・別途5,000円)
※懇親会のお申込みの場合は、当日キャンセルはいたしかねます。
※席に余裕がある限り、当日でも懇親会に6,000円でご参加いただけます。(お料理内容は予約の方と異なる場合があります)

≪お問い合わせ・お申し込み≫
◆神戸酒心館 事業部 078-841-1121(受付時間/ 10:00-17:00)
専用フォーム(No.137)よりお申し込みいただけます
※終了しました。

≪経歴≫
原田和弘(はらだかずひろ)
大阪大学人間科学部卒。
早稲田大学大学院スポーツ科学研究科にて博士(スポーツ科学)号取得。
日本学術振興会・特別研究員、国立長寿医療研究センター・特任研究員を経て神戸大学大学院人間発達環境学研究科・特命助教/准教授/教授として現在に至る。
研究分野は、老年行動学、健康スポーツ論を担当。

≪講演レポート≫
 神戸大学のある鶴甲地区で「いきいきウォーキング」活動など地域の健康づくりに関わっています。今日は、健康のための運動といわれましても「三日坊主」の心配が気になる方へのお話をいたします。
まず、「運動と健康」については厚生労働省のガイドラインを中心に紹介させていただきます。このガイドラインは1989年から順次改訂され、今春には第四版が紹介されています。皆さん自身の健康な日々を維持するための指針にもなると思いますので参考にしていただきたいと思います。
 「運動」というとウェアに着替えてスポーツに取り組むことと思われがちですが、それに加えて「身体活動」があげられます。身体活動は普段の生活活動も含めるもので、その活動の運動強度(メッツ単位)によって効果を計るものです。安静時を基準に、立ち座りや家事活動、散歩や農作業など、それぞれの活動時にどれだけの酸素消費(呼吸を測定)があるのかを評価したものです。座っているだけだと1.3メッツ、座り仕事だと1.5メッツ、普通歩行で3メッツなどが示されています。
 これを、エネルギー消費量(kcal)≒強度(メッツ)×時間(hour)×体重(kg)という式で捉え、健康を維持するには3メッツ以上の身体活動を意識して行うことが重要だと示されています。基本的には、身体活動量が多いほど健康に有益であるとされ、歩数に注目した研究では、1日1万歩を超えても歩数が多ければ多いほど健康に有益だとされます。
さらに、ラジオ体操第一は4メッツで、これは速歩や水中運動のレベルだとされます。ラジオ体操第二は4.5メッツ。ジョギングは7メッツ、ランニングは10メッツなど活動量を測る目安が示されています。
また、筋力トレーニングなども話題になります。スポーツ選手なら能力向上が最優先課題になりますが、普通の暮らしをしている人には健康の観点からは、過度な負荷は副作用も考えなければなりません。とはいえ、適度な筋トレは健康に有益ですので、中京大学の種田先生らが開発された「ちょい曲げ10回(2セット、数分程度)」がおすすめです。太もものスクワットもゆっくり数えながら、呼吸を止めないように10回ほどを折々に試みるのも良いでしょう。
 逆に、近頃の癖になりがちな座ったままの暮らしには注意が必要です。メッツが足りないことからカロリー消費が進まず、脚の筋活動の低下を招き、代謝の低下が健康を損なうもとになります。座りっぱなしの暮らしは避けたいものです。

 こうした身体活動への意識は高まっていますが、どうしても「三日坊主」に陥る不安を抱える人も多いと思います。米国での調査によると継続できる人は3割ほどで、7割は続かないのが当たり前とされていますので、気に病むことではないようです。また、運動の継続は不安ですが、日ごとのお酒は続いている人も多いのではないでしょうか。好きなことは習慣化して続けられます。
「三日坊主」の対策にはいくつかポイントがありますが、今日は三つのポイントを紹介します。
 まず、生活リズムの中でその活動を具体的に位置づけることで、ルーティン化できれば自動的に続けられます。そこで上手に自己管理するには「具体的な行動計画を立てる」、次いで「できたか確認する(記録をつける)」、そして「結果を振り返る」という流れを繰り返すことです。
 二番目は、励みになるモチベーションを見つけることで、例えば「結果に対する期待感」や「価値」、「結果が得られる早さ」などが快感につながるものです。
三番目は、壁にぶつかった時のしのぎ方です。上手く行かない時には、言い訳や責任転嫁など逃げを図り、解決を先延ばしにしがちです。これらの外部事情や心の迷いには、前向きに解決を図ることと、まわりからの応援が支えになります。心理学的には「壁を上手に乗り越えられたら自信になる」といわれ、小さい成功を重ねることがコツかもしれません。
 いずれにしても健康づくりの観点から見れば、「運動」は健康づくりを実現する「手段」のひとつに過ぎません。負担感がぬぐえないのであれば、他の「手段」を工夫してみるとか、ゆとりをもって向き合うことも「三日坊主」の予防になるかもしれません。
(レポート:鷲尾圭司)