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9月のうまいもん/神戸いちじく

今月のうまいもん


 
完熟いちじくをいかに料理に落とし込むかが腕の見せ所
 8月に入ると、神戸市西区ではいちじくの出荷で賑わいます。神戸は、そのオシャレなイメージから土の匂い漂う農業と縁が遠そうな印象を受けますが、実は軟弱野菜を中心とした農業王国で、神戸市北区や西区ではさまざまな野菜や果樹が栽培されているのです。その中でもいちじくは自慢の産物。繁華地や住宅地が近く、都市近郊農業に適しているために良質ないちじくが多く出荷されています。ちなみに産地別に統計を取ると、①和歌山②愛知③大阪④兵庫の順。全国の12%が兵庫県下で栽培されています。県下でも名産地と謳われるのが神戸市と川西市。川西のいちじくは、桝井ドーフィンの発祥とあって昔から知られていますが、神戸市西区のいちじくも川西に負けておらず、今や神戸の栽培法が全国の主流を成すとまで言われているようです。
 神戸市西区でいちじくを栽培しているのは、神出・岩岡・伊川・平野の四つの町。53戸の農家がいちじく栽培に従事しているようです。神戸市西区で作られているいちじくを、「神戸いちじく」と名づけ、JA兵庫六甲はもとより神戸市でも盛んに広報し、地域の名産品として売り出そうとしています。神戸いちじくは、とろける食感と濃厚な甘みが特徴。その秘密は完熟になるのを待ってから出荷するからです。多くのいちじく産地は、消費地が遠いために早くから収穫して輸送中に完熟になるように計算して出荷しています。ところが神戸市西区は消費地が近いのでそんな計算の下に出荷する必要がなく、十分熟れてからの出荷でも遅くはないのです。
 神戸市西区のいちじくの収穫は8〜10月ぐらい。初期は大玉で、あっさりとした味のいちじくで、秋になると実は小さくなりますが、その分甘みはぐっと増します。当初13度の糖度のいちじくを出荷していたのが、秋には18度にもなるというからその甘さ具合いも理解できるでしょう。神戸西いちじく部会の西馬良一部会長によると、「同じ木でも下から実をつけて行き、熟すのに90〜100日ぐらいかかります」との話。一本の木からは22〜23個のいちじくが採れるらしく、2個ずつ熟して行き、次の実が熟すのに6日程かかると教えてくれました。完熟での出荷が神戸いちじくの美味しさを決定づける一つの要因と書きましたが、他県産のように早く出荷してしまうと、どうしても皮が硬いまま市場に流れてしまいます。「どうせ皮を剥いて食べるのだから」と考えるのは素人考えで、西馬良一さんに言わせると、「最も美味しく食べるコツは、完熟を丸ままかじる事」だそうです。完熟になると、甘みが強く、果肉も果皮も柔らかくなります。「果肉と皮の間には甘みがあるので皮を剥いて食べるなんて勿体ない」とグルメも指摘しているくらいです。いちじくの皮には細かい毛がありますが、それが気になるなら塩をまぶしてこすって水洗いすれば、表面の毛やざらつきが気にならずに食せます。
 「さかばやし」では、西馬良一さんと知己を得てから、毎年9月には神戸いちじくを今月のうまいもんのテーマ食材として、会席料理の一部や一品料理で提供してきました。加えて今年も9月15日(火)夜には、神戸いちじくをテーマにした食事会「旬の会」を催します。この旬の会には、西馬良一さんやJA兵庫六甲のいちじく担当者も招いて、西馬さんが栽培したいちじくでさまざまな料理を作って提供する予定です。いちじくは果物のため、そのまま食べる印象が強いようです。「さかばやし」の大谷直也料理長は、神戸いちじくを果物としてだけではなく料理の素材として注目し、揚物・焼物・和え物と様々ないちじく料理を提供する予定になっています。神戸が全国にその名を誇るいちじくを、ぜひこの機会に味わうと共に、日本料理に上手く取り入れた大谷料理長の手腕にご期待ください。

 

(文/フードジャーナリスト・曽我和弘)
2026年9月
 
料理長おすすめの「神戸いちじく」
〈神戸産〉
■いちじくと秋野菜の黒胡麻和え   700円
■いちじくの天ぷら         750円
■いちじくの揚げ出し        780円

※おすすめの一品は前日15時までのご予約にて承ります。
※価格は税込価格です。
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