神戸酒心館

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量り売りで味わう灘の酒(2026.3.11)

SDGsへの取り組み東明蔵

量り売りで味わう灘の酒

 日本酒といえば瓶詰の商品を店頭で買うのが一般的ですが、かつては客が瓶を持参し、豆腐を買うように量り売りで酒を求めるのが日常でした。江戸時代、灘の酒は江戸市場の八割を占め、その流通を支えたのが「樽廻船(たるかいせん)」です。杉樽に詰めた酒を船で江戸へ運び、現地では樽から徳利へ移して売る——量り売りは灘酒の隆盛を支えた文化でもありました。
 当社でも大正時代まではこの方法で販売していたようです。その伝統を現代に復活させたのが、神戸酒心館内にある蔵元ショップ「東明蔵」で続けている量り売りです。来館者との対話を大切にしながら、瓶資源を繰り返し使う環境にやさしい販売方法として20年以上前に始まりました。提供しているのは「福寿 蔵直採り生酒」。300mlまたは720mlの通い瓶に、蔵出しの生原酒をその場で杓ですくって注ぎます。錫製の特注漏斗を通る酒の音や香り、栓をする木槌の音は、蔵元ならではの臨場感を味わうことができます。飲み終えた瓶は洗って持参すれば再利用でき、新たな瓶を使う必要はありません。
 こうした取り組みにより、過去10年間で約3万本の瓶を削減しました。環境への貢献に加え、毎週訪れる常連客や一度に10本以上購入する愛好家も生まれ、「東明蔵」を象徴する風景となっています。さらに2022年からは、圧力と保冷機能を備えた専用容器を使う「FUKUJU KEGDRAFT」の量り売りも開始しました。瓶詰では難しい、微発泡の爽やかさとしぼりたてのようなフレッシュ感を楽しめる蔵元限定酒です。
 瓶は日本酒文化を支える大切な資源です。当社は、昔ながらの量り売りを現代的に進化させることで、環境への配慮と新しい味わいの提案を両立し、灘の酒文化を未来へとつないでいます。


2026年3月11日(水)産経新聞「伊丹・灘五郷 酒蔵便り」