神戸酒心館

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10月のうまいもん/丹波婦木農場の野菜

今月のうまいもんさかばやし

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「料理人達が絶賛する自然派婦木農場の野菜」 

 
 農作物は土による、これは一般的に言われていることですが、私はそれ以上に人によるところが大きいと考えます。多くの料理人と接するうえで思うのは、彼らが素材に求める比重は大きく、いい料理人と呼ばれるには、いい生産者がついているという構図です。昨今は情報が溢れており、農協や八百屋を介さずとも野菜や米を仕入れることができます。名料理人は、差別化を図るために農家へ直接足を運び、採れたてのものをいち早く送ってもらおうと、直接仕入れを行うのです。それほど料理人達は、良い野菜を欲しており、それが最近の飲食店の傾向となっているようです。
 私が丹波の「婦木農場」を知ったのは数年前のこと。春日町(兵庫県丹波市)で有名な農業家がいており、雑誌「るるぶ」などにも取材をされていると聞いていました。「今、農村はおもしろい」がキャッチフレーズで、多くの野菜や米を産するばかりではなく、敷地内に「農村体験施設〇(まる)」を設けて一般の方がが農業に接するような取り組みを行っていたのです。1.5haの土地で収穫される米や野菜は、素材本来の美味しさを有しており、一口食べるとその違いがわかるほど。こんな野菜を食べていれば、「野菜が嫌い」という現象は起きないだろうと思ったぐらいです。
 農家に創業を尋ねるのは愚問ですが、あえて婦木克則さんに聞いてみると、「記録があるのは宝暦4年(1754)から」とのこと。先祖代々がその土地で営んでいるので古さは明確ではないものの、過去帳を遡ると、9代徳川将軍・家重の世に婦木克則さんの十代前の当主の逝去記録が残っているそうです。宝暦というと、神戸酒心館が酒を醸造し始めた時代(宝暦元年)で、くしくも同じ時期に記録が始まっているようです。
 「婦木農場」の名を高めたのは、無農薬栽培。まだそれが大きく報じられてなかった30年前から取り組んでおり、その分野をリードして来た農場としても知られています。現在の当主である婦木克則さんは、大学時代に有機栽培にふれました。きっかけは多摩ニュータウンのスーパーで買ったきゅうりの味が良くなかったこと。これが子供の頃から食べて来たきゅうりと味が全く異なっており、不思議に思ったのが有機栽培を勉強するきっかけになったそうです。「大学から戻って来ても当時は農薬が当たり前のように使用されていた時代なので、なかなか理解してもらえなかった」ようです。それを周囲に理解してもらい、品目ごとに移行して行ったのですが、全品目に移行するまでに十年を要したと語ってくれました。やがて時代が婦木さんに追いつき、今では有機栽培、無農薬栽培がきちんと市民権を得るようになったのです。
 「婦木農場」は1.5haの土地に約百種類の農作物を育てています。いわば、少量多品種の近郊農家で、秋には黒豆の枝豆やサツマイモ、里芋、カブ、ブロッコリー、大納言小豆などが収穫できるそうです。特に米は美味しく、「婦木農場」の主作物の一つに数えられるくらい。紙マルチなる手法を採用し、段ボールの古紙を土に密着させることで雑草が生えにくい土壌を作り出していると話します。「殺虫剤は減らせるが、除草剤を減らすのは難しい。それを解決すべくしぼった絞った知恵が紙マルチです。コストがかかる上に作業が大変と誰もマネしませんでしたが、安心安全で美味しい米ができる手法を確立しました」と説明します。「婦木農場」の米が美味しいのは、有名料理人の言葉でわかります。彼らは、「ごはんが美味しい。いろんな名素材と合わせても十分主張をしてくれ、負けない味を持っている」と絶賛するほどでした。
 さて、今月の「さかばやし」は、そんな「婦木農場」の野菜がテーマです。一品料理や会席料理にも提供していますので、ぜひ有名農業家が作った野菜をご賞味ください。
 
秋撮影お野菜
 

料理長おすすめ婦木農場野菜の一品
もうしばらくお待ちください

※価格は税込みです
※おすすめの品は変更の場合もございます。

(フードジャーナリスト・曽我和弘)