神戸酒心館

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【第145回酒蔵文化道場】私たちは今どこにいるのか-私たちを取り巻く社会、そして生涯現役人生への道標」<レポート有>

酒蔵文化道場酒心館ホール


第145回
酒蔵文化道場

≪題目≫
私たちは今どこにいるのかー私たちを取り巻く社会、そして生涯現役人生への道標」

≪語り手≫
経営学博士 元大学教授 コンサル業
島田 恒 氏

≪内容≫
先ずわが国の経済や政治の状況を世界の流れのなかで確認いたします。
残念ながら世界的地位は下がり世界への影響力もインパクトを欠いています。
その現実を理解すると共に、企業・行政に加え非営利組織の働きの意味と事例を紹介、
私たちを取り巻く社会状況を確認しながら、
生涯現役人生の道標についてお話をいたします。

島田恒氏についてはこちらをご覧ください。
島田恒

≪開催について≫
◆2026年1月30日(金) 16:00〜

講演レポート
作成:鷲尾圭司氏

≪経歴≫
1939年兵庫県生まれ。神戸大学卒業ののち㈱クラレに就職。営業から経営へと現場を体験する中、米国研修が勉強嫌いの転機となり営業部長時代に『日本的経営の再出発』を刊行。やがて独立してコンサルタント業に踏み切る。営業や経営の原理原則を広めようと、龍谷大学や関西学院大学などで教鞭をとる。また、「人間はどう生きるべきか」「社会はどうあるべきか」を問う中で、NPOという非営利活動に価値を見出し、『NPOという生き方』など多くの著作で世に問うている。

≪講演レポート≫
1. はじめに(人生二毛作)
 高度経済成長期に会社員として営業や経営に携わる人生の一期に次いで、経営コンサルタントとして社会教育に携わる第二期を持つという「人生二毛作」を生きてきました。
 終戦直後の原体験として、焼け野原の町と国家体制の大転換、なによりも腹ぺこ経験とそれを癒してくれた教会でもらったチョコレートがあります。また、学生時代は勉強嫌いでしたが、考え方の底流に「人間はどう生きるべきか」「社会はどうあるべきか」という問いがありました。
 大学を出た後、クラレに就職し、営業や経営に携わる中で日本的経営を体験(麻雀やお酒の付き合いを含み「わが社」意識をもった仲間の協働)し、営業や経営の原理原則として「社会のニーズに対して差別化されたものを提供することで周囲に貢献し、三方よしの好循環を生み出す」ことに思いを深めました。
 勉強嫌いの転機としては米国研修があり、アメリカ企業を肌で感じたことが学びのきっかけとなり、猛勉強を重ねて営業部長時代に『日本的経営の再出発』を刊行しました。さらに1990年のバブル崩壊のころ、独立してコンサルタント業へ転身し、研究者への道として博士課程に進み、経営学博士を取得するなど二足目のわらじを履くことになりました。そして関西学院大学などで「日本的経営論」を講義する一方、社会を学ぶ中で非営利組織にも参加して「NPOのマネジメント」を研究してきました。
2. 経済・政治の現実とこれから
 政治面では国家のあり方に三つあげられます。ひとつは西欧を中心に「自由」を重視する「民主主義国家」、また強権による独裁的統治の「専制主義国家」、そして日和見を超え両陣営の仲介が期待される「中間国家」があるといえます。
 ロシアのウクライナ侵攻やイスラエルとパレスチナの対立、トランプ施策の自国中心主義が世界を混乱させています。国連も無力化してきましたし、日本自身も国際的地位を低下させてきています。そのような時代にあって、日本はどうあるべきか、私見としては「日本はEUなど民主主義国家や国連と連携し、平和主義憲法の精神に基づき、話し合いと和平の信条を主軸にしてわが国独自の貢献を目指し、尊敬を受ける存在になる」ことを期待しています。
 経済面では、戦前の天皇中心から戦後の会社中心へと変化したものの日本的経営の特徴は世界にも希な共同生活体を重んじた「みんなでヨイショ!」が高度経済成長を推し進め1968年には世界第二位のGDP規模を誇るほどになりました。
「安くて良いもの」を産み出してきた成功は、「あまりにも経済」に偏重してバブルを深め、同時に世界経済の潮流が情報産業へと変化するタイミングを逃して「失われた30年」に陥ることになりました。経済規模も世界第4位に転落してきました。
 対策として私見を述べると、IT産業の先端はもはや追いつきませんので、情報技術を活用した環境・医療・観光産業を重視する道に可能性を感じます。
3. ホントウの豊かさ-文化・共同、そして人生
 世界幸福度調査を見ると北欧諸国がトップを行き、日本は55位に甘んじています。経済ではアメリカ型に優位がありますが、成果は大きいものの不振は貧困に直結してしまいます。幸福度には経済ばかりでなく文化や共同という「人間のつながり」が重要です。そこで注目されるのが利潤目的ではない非営利組織(NPO)です。
 事例としてYMCAや淀川キリスト教病院、アフガンで活躍された中村哲医師などの活動を見ると社会的ミッション(使命)が基軸になっていることに気づきます。私の底流となった問い「人間は、社会はどうか」という面で、ドラッカーも社会観や人間観として「自由というのは放任ではなく、責任ある選択だ」と指摘しています。
 最後に、内村鑑三は「あとに遺せるもの」として「金、事業、思想」は評価に巧拙があり、誰にも遺せるものとしては「信念を持ち実践する姿勢(高尚なる人生)」をあげています。人生は一度限り、生きている限り人生には「余生」はなく「現役」と思い定めることが大切で、NPOにも学びながら豊かな歩みを心がけたいと考えます。