神戸酒心館

新着情報

10月のうまいもん/足赤海老

今月のうまいもん

漁協や漁師さえ一目置く旨み抜群の海老
 

 足赤海老が丸々一匹殻付きで焼いた料理がさかばやしの会席料理に登場します。そう聞くとなぜか心がときめきます。シンプルに塩焼きしたものでさえ、我々食べ手にはご馳走に映り、食欲をそそるのです。それくらい海老は存在感があって、まさに料理として堂々たる主役です。日本人の海老好きは有名で、世界で最も消費する国だそう。旨みと甘みがあって他の魚介類よりクセもなく、和食でも洋食でも中華でも使い易い点から飲食店でも調理によく使う素材です。海老の旨みの因は、グリシンが多い事。グリシンとは遊離アミノ酸で、これが食べた時の旨みに繋がっているようです。
 海老の中でも最も価値が高いと、よく料理人が使うのが車海老でしょう。車海老は日本の内湾に生息し、江戸前の寿司ダネや天ぷらに欠かせない素材ですが、内湾の開発によって激減し、そのほとんどを養殖に頼る素材となってしまいました。和歌山・湯浅で料理屋を営む「千堂」の料理長・千川晃矢さんは「車海老は95%が養殖。その点、紀伊水道で獲れる足赤海老は天然もので、味も車海老に劣らないのでよく料理に使っています」と地元の名産・足赤海老推しの実情を語ります。
 足赤海老とは、正式名称をクマエビといい、十脚目クルマエビ科に属す海老の一種。足がきれいな赤色をしている点から関西では足赤海老と呼んでいます。正式名称のクマエビの語源は、海老の性質がどうやら熊を連想するからだそうで、その他には脚の紅白模様が歌舞伎の隈取りのように見えるからその名がついたとの説を唱える人もいるくらいです。関西では足赤でその名が通っていますが、地域によっては赤脚とも、赤縞とも称す場所があって、なぜか日本海側の京都府では狸と呼んでいるようです。
 足赤海老は、大きな雌で22cmにもなるというくらい立派。車海老に似てはいますが、縞模様が明確でないのと、触角に白い縞模様がある点で区別できます。以前、徳島の漁師にアンケートを取った所、「旨いのは①伊勢海老②車海老
③足赤海老の順」との回答が多かったようで、漁師達もその味の良さに折り紙付きと推しています。ただ、車海老ほどメジャーに成り切れないのは、足赤海老が天然もので、しかも漁獲高が少ないから。傷むのが早いのも一因で、その多くは産地消費に。足赤海老の良さを知っている料理屋に回るケースがほとんどだと聞きました。そんな地元産の足赤海老の良さをもっと知ってもらおうと、和歌山県では雑賀崎・和歌山北・海南の各漁協が共同ブランドとしてPR。「高級な車海老より甘みが強く、車海老より安いのが利点」と足赤海老の知名度アップに取り組んでいます。口の悪い人は、「クルマエビとクマエビの違いは『ル』があるかないか。『ル』が付いている分、車海老は高くなる」とまで言い、その味わいに差異はないと話す人までいるくらい。とにかく紀伊水道で獲れる足赤海老は、漁師でさえイチ推しする程の味わいだという事です。
 ところで「さかばやし」では、10月、秋に旬を迎える「足赤海老」を「今月のうまいもん」のテーマ食材に選定し、淡路島由良漁港から産地直送で仕入れた足赤海老を使用して、会席料理の一部や一品料理でご提供いたします。由良漁港は、和歌山とは紀伊水道で挟んだ反対側で、当然良質の足赤海老が水揚げされています。そんな足赤海老を由良漁協でいち早くセリ落として「さかばやし」へ送るのは、地の魚介類を知り尽くした由良の仲卸し「海幸丸水産」の橋本一将さん。父・橋本一彦さんから商売を受け継ぐ人物で、「10〜12月によく獲れる足赤海老は、海老自体の味が車海老より濃くて旨みも抜群」と推してくれます。「さかばやし」では、塩焼きや酒盗焼きにしたり、海老芋と一緒に豊年揚げにしたりと様々な味わいでお楽しみいただきます。ぜひ、この機会に“幻の海老”と称される足赤海老をご堪能ください。

(文/フードジャーナリスト・曽我和弘)
2026年10月
 
料理長おすすめの〈淡路島由良産〉「足赤海老」
■足赤海老もろみ味噌焼   1,200円
■足赤海老塩焼き      1,500円
■足赤海老酒盗焼      1,800円
※ご注文いただいてから少々お時間をいただきます。
※おすすめの一品は前日15時までのご予約にて承ります。
※価格は税込価格です。
※写真はイメージです。