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3月のうまいもん/山菜

山菜01c
”春は苦みを盛れ”には、理由がある」
 
味覚の中で最もわかりやすいのは、甘み。これは幼い子が甘いものを欲することからも理解できます。それに対してわかりにくいのが苦みだといわれています。本来、苦い=まずい、もしくは苦味は危険なシグナルとして脳に伝達されるのですが、様々な食経験を積んでいくうちに、やがて苦い味にも美味しさを見い出します。そのため、ビールは、大人が飲めば美味しいと感じるのですが、子供の場合はまずいと拒否反応を示すのでしょう。四季の味についても同じようなことが言えます。一年間で、収穫の秋といわれる秋は何を食べても美味しいと思い、次に寒さを感じる冬は鍋物などの温かいものを欲し、涼を摂りたい夏は冷たいものが美味しいと感じます。一年のうちで最もわかりにくいのが春で、この季節は特段の産物が見つかりません。昔から「春の料理には苦みを盛れ」と言われるように、春らしい産物は、山菜程度しか挙げるものがありませんでした。
 ところが、本来苦手なはずの苦みもこの季節だから美味しいと感じるようです。人は冬の寒さから身を守るために脂肪を溜め込むようにできています。やがて、気温が上昇し、植物が芽ぶくようになると、溜め込んだ脂肪が邪魔になり、体外へ排出したくなります。その要素として苦みは必要。つまり春に山菜を多く摂ることで、代謝を促し、冬に溜まった脂肪や毒素などの老廃物を排出するようになっているのです。熊が冬眠から目覚めると、まず蕗の薹を食べるといわれています。この山菜は、日本原産のもので全国の山に自生しています。独特の苦みを有しており、この苦みやエグみが身体にはとってもいいらしく、熊もそれがわかっているのか、冬眠から目覚めるとそれをいち早く探して口に入れるのだとか。ちなみに蕗の薹とは、春に咲く蕗のつぼみのこと。その言葉は、蕗と薹の二つからなり、薹とは茎が高くなった部分のことをいうのです。茎(薹)が伸びすぎると、硬くなって食べにくくなります。このことから"薹が立つ"という言葉がうまれ、皮肉にも蕗の薹は、蕗の姑なんて言い方もされるのです。
 山菜は野菜かどうかと尋ねる人がいます。実は野菜の定義は、畑などで人の手を要してできたもので、山菜は自然の中で自生するものを指しています。冬野菜の季節が終わると、夏へ向けての野菜づくりが始まります。昔は、その端境期となる春には何も食べるものがなかったために、野や山に自生する山菜を求めたのでしょう。日本人と山菜の関係は深く、青森の三内丸山遺跡からタラの芽の種が見つかっており、縄文時代より山菜が食されていたことがわかります。自生するものなので飢饉には影響がなく、そのため江戸時代の飢饉の際に山菜が人々の命を救ったとの記述も見られるようです。
 山菜には、前述した蕗の薹に、タラの芽、そして独活、こごみ、うるい、ぜんまい、セリと様々な種類があります。今月の「うまいもん」では、これらの山菜をふんだんに用いて献立に活用しています。会席料理の一部や一品料理に山菜を用いていますので、「春は苦みを食べる」のフレーズの如く、しっかりとこの季節の味を堪能してみてはいかがでしょうか。
山菜のお浸し01a
(文/フードジャーナリスト・曽我和弘)
 
料理長おすすめ「山菜料理」の一品
■鰆の山菜餡掛け  1,300円
■黒毛和牛の山菜にがみ小鍋 2,600円
■穴子と山菜の天ぷら 2,950円
※価格は税込みです
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※数量限定のため、品切れの場合もございます。

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