1月のうまいもん/須磨海苔

黒くて肉厚がいいのが須磨海苔らしさ
オシャレな街の印象が強い神戸で、「須磨が海苔の産地だ」と聞いてもピンと来ない人も多いのではないでしょうか。でも日本の海苔の産地を大別すると、佐賀・福岡・熊本に広がる有明海と、兵庫・香川の瀬戸内海。前者を有明産と呼び、後者を瀬戸内産とと呼び、海苔の名産地になっています。瀬戸内産の中でも兵庫県は主要な海苔養殖の場。黒くて肉厚のいい海苔は兵庫県産の特徴ともいえ、コンビニの直巻きおにぎりの海苔はほぼ兵庫県産と言われてます。神戸の老舗海苔店「菊屋商店」三木麻差子社長の話では、「海苔には等級が800くらいあって浜によっては多少の差が生じる」そう。ここでいう浜とは養殖地の事で、兵庫県産は赤穂から須磨まで本州側が12ヵ所と淡路島の8ヵ所で海苔が養殖されています。神戸の須磨は兵庫県でも最も東にあたる養殖場。明石も海苔では有名ですが、須磨の海苔も明石海苔には負けないくらいの質の高さを誇っているのです。2007年に神戸市漁業協同組合は、地域ブランドとして〝須磨海苔″を商標登録してそのブランド価値を高めてきました。
神戸では9月末から10月上旬にかけて海苔の種付けを行って10月下旬に育苗を始めます。12月から、4月にかけてのシーズン終了までに10〜12回収穫するそうです。このうち一番海苔と称されるのは、文字通り一回目に摘み採ったもので、これは年間の収穫量のうちの2〜3%にしか当たらず、かなり貴重な品だとか。新芽海苔とも呼ばれており、香りが良くて口に入れると柔らかくとろけるようになります。特に生海苔は、海から採った状態のような形。寒冬期に採れるとあって歯応えもあって香りもいい。味も海苔らしさが実感できるくらい美味しいのです。焼き海苔でも初摘みは秀逸で、見ためは二番海苔と変わりませんが、海苔本来の香りと柔らかな食感があって歯切れも違って明らかな差を感じます。海苔業者は「新茶が旨いのと同じ」とお茶の摘む時期になぞらえてその良さを説明します。
以前は海苔といえば有明産といわれているくらい有明海苔の人気が高かったそう。その証拠に今でも東京の人はギフト用に有明産を求める傾向が強いようです。ところが、一般市場に目を向けると、このところの不作にも因があってむしろ瀬戸内産の方が持て囃される傾向に。現に2025年度の漁期の養殖海苔生産実績によると兵庫県の生産量は19.0億枚で、産出額は434億円と過去最高となり、三年連続の日本一を誇っています。
今回紹介する須磨海苔も好調を示す兵庫県産海苔の一つ。須磨海苔は、大阪湾の豊富な栄養と、明石海峡の激しい潮流にもまれて育つためにアミノ酸やカルシウムをたっぷり含んで、しっかりした肉厚が特徴。板海苔にすると、色が黒くて巻き寿司やおにぎりにはぴったりだといえます。ちなみに神戸産と呼ばれるのは、東須磨・須磨浦・塩屋・東垂水の海で養殖したものを指します。
「さかばやし」では、地元神戸で収穫された須磨海苔の美味しさを知ってもらおうと、2019年より冬場の時季に須磨海苔を仕入れて、毎年提供をしてきました。特に生海苔は、原藻とも呼ばれてとろりとした食感と強い磯の香りを有しています。この生海苔の風味を楽しんでもらうべく自家製生海苔の佃煮にしてご飯の供として提供しています。1月は須磨海苔を「今月のうまいもん」のテーマ食材とし、会席料理の一部や一品料理でお楽しみいただけます。ぜひこの機会に地元の名産をご堪能ください。
(文/フードジャーナリスト・曽我和弘)
2026年1月
料理長おすすめ「須磨海苔」の一品
■須磨海苔の佃煮 550円
■須磨海苔玉子寄せ 800円
■須磨海苔と寒鰤の小鍋 1,800円
■須磨海苔と冬鴨つみれ小鍋 1,900円
■粕汁小鍋 ~須磨海苔とともに~ 1,700円
※おすすめの一品は予約にて承ります。価格は税込価格です。
※写真はイメージです
