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6月のうまいもん/山 椒

神戸らしい山椒料理が「有馬食堂」とのコラボで生まれる!?

 

「山椒は小粒でもピリリと辛い」。そんな諺(ことわざ)がよく使われます。比較的辛さを料理に用いない日本料理にあって山椒とわさびは、辛さを表す食材で、海外では日本らしさを表現するのに用いられたりします。実際にロンドンで行われたカクテルコンペでは、日本人出場者が山椒を用いたことで高く評価されたようです。
山椒といえば、和歌山県が目立ちますが、実は兵庫県もその産地として有名です。養父市八鹿町の朝倉地区で採れる朝倉山椒は、棘(とげ)のないことから収穫がしやすく、実が大きくて香りがよいために料理人が多用する食材として知られています。また、日本料理の世界において「有馬焼」や「有馬煮」など“有馬”と表記すれば、それは山椒を示すものです。明治初期に山椒の実を醤油煮にした“有馬山椒”が話題を呼び、湯治客の土産物として定着したのがきっかけで、一躍、有馬=山椒の印象が強くなりました。かつては六甲山や有馬温泉界隈でも山椒が多く採れたそうで、有馬の人達は季節になれば花や実を摘んで料理に使用したそうです。元来、有馬は山椒の葉、花、実、皮の4つの部分を食す習慣があり、これは他地域にはあまり見られない特徴です。殊に山椒の木の皮を細切り昆布といっしょに焚く佃煮は、「辛皮(からか)」と呼んで土産物になっているほど。これを酒のアテとして楽しむのは、朝倉や有馬ぐらいかもしれません。口の悪い人は「貧乏人の酒のアテ」といいますが、これはあまりの辛さのために「辛皮」一つあれば何杯も飲めるのがその言葉の意味らしいのです。
有馬温泉では、現在、かつて旺盛だった有馬山椒を復活させようとの動きがあります。7年程前、老舗温泉旅館「御所坊」の金井啓修氏と自治会長の家形氏、登山に詳しい磯部氏、それに兵庫県農林事務所の岡本氏が有馬の鼓ケ滝から山中に入り、六甲山に生える有馬山椒の原木と思われるものに出合いました。彼らはその木から一部(マッチ棒のサイズ)を持ち帰り、県の北部農林技術センターに預けたのです。接ぎ木して5年程そこで育成すると、それが人の背丈ほどに成長。この木をさらに神戸市北区の大沢地区や有馬周辺で育てようとしています。この有馬山椒の木から山椒の花や実が大量に採れるまでは、まだまだ歳月がかかりますが、まさにロマンのある事業計画だと思えます。
この有馬の山椒復活計画以外にも有馬温泉では山椒を用いて商品化を継続中。その一つが「有馬玩具博物館」内にある「有馬食堂」のソースでしょう。同店は「御所坊」が営む洋食屋。ハンバーグと野菜が旨い店として知られています。金井庸泰氏(金井啓修氏のご子息)が考えたのは辛いハンバーグ。色んなハンバーグがある中で、唯一見当たらないのは辛い味のもの。そこで有馬らしく山椒を使ったソースを考えたのです。「有馬食堂」の料理アドバイザー・藤本喜寛先生(元辻学園TEC日調教授)が金井庸泰氏の依頼で考案したソースは、味噌を用いたもので、山椒の辛みが目立つ味。「有馬辛~いソース」と名づけ、「有馬食堂」の「R20ハンバーグ」(20歳以下のお断りの商品⁈)にかけて提供しています。
今月は山椒がテーマということもあり、「有馬食堂」とコラボし、その「有馬辛~いソース」を拝借しました。そのソースを用いての一品料理を「さかばやし」の加賀爪料理長が考案していますので、ぜひこの機会にご賞味ください。
(フードジャーナリスト・曽我和弘)

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