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4月のうまいもん/蔵元ならではの酒粕料理

~四季を通じての酒粕料理があってもいい~

 4月も引き続き「今月のうまいもん」は、酒粕を取り上げます。酒粕=粕汁のイメージが強く、和食の素材と思われがちですが、酒粕プロジェクトの浸透により、西洋料理や中華料理のシェフも使用することで、その捉え方が変化しつつあります。あるフレンチのシェフいわく、「酒粕はクリームチーズのよう。これまで和の食材と考えていて敬遠して来たのですが、用いてみれば面白く、汎用性の広さがわかりました」と述べています。このように私達が知らない領域にまで入っていけば、きっと興味深い料理が出来るはずで、その可能性を酒粕プロジェクトでは探って行こうと思っています。
 ところで、「さかばやし」でも酒粕を使用した面白い料理を考えてみました。4月から登場する「“粕”三兄弟食べ比べ」がそれ。日本酒を絞ると、酒粕が残るように、みりんにはみりん粕が、醤油には醤油粕が存在します。ところがこれらは、酒粕のように認知度は高くなく、醤油粕に至っては消費者向けに流通していないのが現状です。酒粕料理を突き詰めるなら、他の粕も調理してみようというのが発端で、みりん粕を高嶋酒類食品(株)に、醤油粕を湯浅醤油(有)から分けていただき、厨房で模索しながら「さかばやし」独自の料理にしたのです。「さかばやし」の加賀爪料理長は、「各々の個性を活かした味にしたい」と語り、これら三つの粕をクリームチーズと合わせました。クリームチーズと混ぜることでまろやかな風味になりました。勿論、酒の香りとその味は十分醸しています。一方、みりん粕+クリームチーズは、みりんの甘みが加わってスイーツのような雰囲気を持つ一品になりました。最も難しかったのが醤油粕で、どうしても塩味が強いためにその調整に苦労したようです。ここでは塩味を抑え、辛めのチーズのように仕上げています。
 酒粕+クリームチーズ、みりん粕+クリームチーズ、醤油粕+クリームチーズの三種は各々個性的な味で、十分酒の肴になるものです。でも、そのままでは面白くないと、あえて三つを混ぜ込んで一つの味にしたのです。三種の粕を合わせたクリームチーズは、最初に醤油粕の辛さが舌に来て、みりん粕の甘さがそれをやわらかにして、酒粕の味わいで大人の味になるという摩訶不思議な味付。こうして生まれたこの一品は、多分料理史上初めての事ではないでしょうか。
 これまで酒粕というと、冬場の印象が強かったのは、昔の酒造りを思い描いているため。今では夏場を除いた3シーズン(秋・冬・春)に造りを行っているので自ずと酒粕が手に入ります。そこで、酒粕=冬のイメージを拭い、料理素材として四季を通じて酒粕料理を考えていく、そんな店があってもいいと思います。「さかばやし」では、冬の「酒屋鍋」は別として、四季対応型の酒粕メニューを提案すべく、その創作に力を入れていきます。史上初の「“粕”三兄弟」の一品や、神戸ビーフを「福寿」大吟醸の酒粕に漬けた「神戸ビーフの酒粕漬け」を4月にご提供しますので、ぜひご賞味ください。
 ※「神戸ビーフの酒粕漬け」は事前予約にて承ります。
(文/フードジャーナリスト・曽我和弘)

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