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2月のうまいもん/香住の「紅ズワイガニ」

香住漁港が力を入れてアピールする「紅ズワイガニ」の味
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旅行関係者や通販業者に聞くと、関西人ほど「カニ」好きはいないらしく、冬になるとそれを求めて買い物ツアーやテレビショッピングなどが加速。右を向いても左を向いても「カニ」だらけの状態になるそうです。これは私の自論ですが、高級な食材ほどそれなりの対価を払わねば旨い味にありつけないように思います。なので格安なものは、まず疑ってかかれがグルメの鉄則。格安なものは、何らかの欠点があるからそうなっているのです。格安な「カニ」の場合、多いのは外国産か、かなり前に獲った冷凍もの。数年前から産地偽装がやかましくいわれるようになり、姿は消したみたいですが、10年ぐらい前には「ぜひ食べてください」とアラスカから送られて来た「カニ」が、なんと箱に「越前ガニ」と堂々と記していたものです。値段を聞くと、ブランドのある「越前ガニ」がそんな値段で売っているはずもなく、格安なものには何かが潜んでいると身を持ってわかった次第です。
さて、第一次産業は何処もブランド化をしたいらしく、各産地がこぞってPRに力を入れています。「松葉ガニ」の産地として知られる兵庫県の香住も同様、近年では香住で揚がる「紅ズワイガニ」を「香住ガニ」と称して売っています。
ここで「カニ」について少しふれておきますが、人によっては、「越前ガニ」より「松葉ガニ」の方が上という言葉が聞かれますが、実は「越前ガニ」も「松葉ガニ」も同じで、全て「ズワイガニ」のことを指します。北陸ではそれを「越前ガニ」と、山陰では「松葉ガニ」と呼んでいるだけなのです。「ズワイガニ」属の「カニ」は一般的に三つの種が流通されており、「越前ガニ」や「松葉ガニ」と呼ばれる「ズワイガニ」と、「大ズワイガニ」、「紅ズワイガニ」がそれに当たります。
香住漁港がことさら力を入れて売り出そうとしている「紅ズワイガニ」は、名前の如く茹でる前から赤い「カニ」です。「ズワイガニ」は、水深200〜400mの所に棲んでおり、それを底曳き網で獲るのが一般的。それに対して「紅ズワイガニ」は、それより深い500〜2500mの場所に暮らしており、鳥取などの地方では籠漁で獲ることが多いのです。ロープに50mの間隔で1.3mぐらいの籠の付いた漁具を垂らし、二昼夜ほど沈めて「カニ」が入るのを待ちます。そうして獲るスタイルが多く見られる「カニ」ですが、身がぎっしり詰まった「ズワイガニ」に比べ、「紅ズワイガニ」の方は身に甘みがあって水分が多いのが特徴。だからその水分が抜けてしまうと身が少なくなるので甲羅を下にして保存し、水分が抜けぬように気を配るようです。
聞くところによると、「紅ズワイガニ」は歴史が浅く、1943年に隠岐堆の生物調査中に赤みをおびたオス10匹、メス1匹を発見。元農水省水産試験場香住分場の山本孝治さんが命名したのが始まりです。そして紅ずわいの名がつけられてから一般化したのです。活けで流通されるのが難しいといわれ、茹でてからしか流通させることができないと、以前は産地で食べるか、加工品に回すかでしたが、今では流通の状況もよくなり、都会まで鮮度を保ったままやって来るようになりました。「紅ズワイガニ」も、これまたロシア産などが幅をきかしていますが、そんな安いものには見向きせず、やはりグルメは、国内で獲れた上物を味わうべきかもしれません。甘くて口内でほぐれる食感は、やはり「紅ズワイガニ」ならではのもの。ぜひとも香住や柴山など兵庫の漁港で揚がった上質なものを楽しみたいものです。
「さかばやし」では、香住や柴山、津居山といった兵庫県産の「紅ズワイガニ」を今冬は直送してもらい、メニューに取り入れることにしました。会席料理にも使いますし、一品料理もあります。ぜひこの機会に兵庫県産の名素材を味わってみてください。
(文/フードジャーナリスト・曽我和弘)

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