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12月のうまいもん/淡路・福良の三年とらふぐ

今や下関産を凌ぎつつある淡路島・三年とらふぐ
%E3%81%A8%E3%82%89%E3%81%B5%E3%81%90.jpg「フグを食すことは、文化そのものだ」。こう言ったのは、作家の坂口安吾だったかもしれません。当然ながらふぐには毒があります。だが、それを知ってまで人は食べようとして来た歴史が存在したのです。例えば、原始時代、ある男が毒のある箇所を知らずにふぐを食べたとします。彼は毒にやられ、息を引きとる間際に「フグの目玉には毒がある」との言葉を残しました。その教訓から次の男は、目を除いて食べるのですが、これまた毒にやられてしまいます。そして男は「フグの骨には毒がある」と言い残します。こうして中毒死する度に疑わしき場所は省かれ、色んな経験から正しい知識を我々は持つことができたわけです。これを氏は「文化といわずして、何が文化なのか」と打(ぶ)ったのでしょう。
 フグの最大水揚げ地は、下関ですが、そのうち関西で7割が消費されています。坂口安吾の文化論にたとえるなら、「関西こそ最も文化の高い地域である」と言うのは少々おこがましいでしょうか。
 そういえば、このところ淡路島・福良が下関を脅かしそうな勢いを見せています。それは福良の地で三年とらふぐなるものが養殖され、それが高い評価を得ているから。一般的に養殖ふぐは二年で出荷されます。二年間育成すると、だいたい800g以下に。それがあと一年余計に時間を費やすことで1.2㎏以上になり、養殖特有の黒い筋も消えて天然と見間違えるほど肉がぷりっとするのです。
 淡路島の福良は、おなじみの鳴門のうず潮があり、世界の三大潮流にも数えられる場所。そんなところで一年も余計に過ごすのですから身は締まり、海峡のエサをたっぷり食べるので太るそうです。加えて水温も良い影響を及ぼしており、福良湾の水温の低さ(全国のふぐ養殖漁場で最も低いといわれている)が肉質をよくするのだと伝えられています。従来の養殖ものより一年も余計に泳がせるわけですから自ずとリスクも出て来ます。生き物なので余計な一年で死ぬこともあり、全て出荷できるとは限りません。少しでも多くを出荷するために養殖業者はペンチのようなもので一匹一匹フグの歯を折ってから泳がせるそうです。こうすることでふぐ同士が噛み合ってケガするのを防ぐことができ、多くの元気なふぐを出荷できるようです。
 淡路島・福良の三年とらふぐは、身の締まりがよくて旨みも抜群。一部では「天然以上だ」との声も聞かれるほど。南淡路にある国民休暇村では、三年とらふぐをメインに商品化をし、今や人気が集まるブランドとして胸を張るぐらいで、その評価は兵庫県を飛び越えて全国規模で広がりつつあります。
 「さかばやし」では、毎冬この三年とらふぐを淡路島から仕入れ、皆様にお楽しみいただいております。12月は会席料理の一部や一品料理にも使っていますので、ぜひお召し上がりください。身の締まりがよく、淡白ながらもコクのある三年とらふぐを食べることが、今や兵庫県の食文化のひとつといえるかもしれません。
(文/フードジャーナリスト・曽我和弘)
<今月の一品料理>
・三年ふぐの唐揚げ  950円
・三年ふぐのてっさ  1,300円
・三年ふぐのてっちり(小鍋)  2,300円
*入荷状況により内容が変更となる場合がございます

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