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8月のうまいもん/淡路島の鱧

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「今年の鱧は珍しい鱧のすき焼きで」
 
夏の食材の代表のように思われている鱧ですが、その人気は東西でずいぶんと違うようです。西日本、殊に関西では鱧が大人気。「冬場のフグ、夏のハモ」と言われるぐらいです。「さかばやし」でも鱧をテーマにした「旬を堪能する会」を企画すると、すぐに満席になるほど。では、これほど関西の食通を唸らせる鱧がなぜ東京ではそんなに食されてないのかといえば、職人(料理人)の技術の差に一つの因があるようです。
 鱧は一匹に約3500本もの骨があります。そのうち小骨は600本以上。この骨が厄介で、普通に調理したとて、これが邪魔して非常に食べにくいのです。昔の料理人は賢くて、この魚をいかにしたら食べられるかと考えて、骨切りなる技を編み出しました。鱧の骨切りは、薄い皮を残して身の中にある小骨を垂直に刻んでいきます。包丁も骨切包丁と呼ばれる特殊なものを用い、一寸(約3.3cm)に24回ほど包丁を入れて砕きます。この技術がなかなか東国では広まらず、故に骨の多い鱧を敬遠する傾向が強かったのです。鱧は主に瀬戸内や九州で生息し、温暖な海を好みます。そのため東国よりも西国の方が棲む場所が多く、余計に西国の職人がこの長い魚を何とかして食してみようと考えたとて不思議ではありません。
 2014年の水揚げデータと少し古くはなりますが、鱧の水揚げ日本一は愛媛県の八幡浜港、次いで2位が淡路島・由良漁港です。1位と2位の差は、270tと98tと開いてはいるのですが、キロ単価が由良の鱧は千円を超えているのに対し、八幡浜や3位の小松島(徳島県)の鱧が600円くらいと、これまた差が開いているのです。10位の鶴見(大分県)に至っては200円足らずで、これを見ると、いかに由良の鱧が上質で価値が高いかわかってもらえるでしょう。一口に鱧といっても獲れる海域が異なれば味も異なって来ます。餌場も違うのでなおさら味に違いが生じるのです。古くから淡路島は、鱧の名産地として知られており、特に南に浮かぶ沼島では5月下旬に鱧供養が行われているくらいです。この祭りでは、船上から海へ鱧が投げ込まれ、宙を舞います。また福良(南あわじ)では、鱧が10mのコースを滑り落ちる速さを競う鱧レースなるイベントも行われています。このように淡路島の漁港にとって鱧とは特別な魚として映り、夏の到来を待って漁を行うのです。
 元来、和食の料理人は、「800gが一番旨い」といい、1kgまでのものを仕入れようと躍起になります。ところが、淡路島の漁師などは「本当に旨い鱧とするのは、1.5kg以上の大物。由良漁協の橋本さん(海幸丸水産)に言わせれば、「3kgぐらいの太い鱧で、小顔のものが良い」と言うのです。そこで「さかばやし」では、3kgとまでいきませんが、できるだけ大物を仕入れて提供させていただきます。会席料理の一部や一品料理に用いるのは勿論ですが、今年は鱧を「すき焼き」の具材にして提供する献立も加えました。鱧のすき焼きといえば、かの食通・北大路魯山人が愛した料理でもあります。要予約で8月9日までの期間限定ですが、ぜひこの機会に珍しい「鱧のすき焼き」をお召し上がりください。
(フードジャーナリスト・曽我和弘)
 

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料理長おすすめ鱧の一品
・鱧の南蛮漬け 900円
・鱧の焼き霜造り 1,200円
・鱧のしゃぶしゃぶ小鍋 1,600円
・鱧と有機野菜の天ぷら 1,900円
※価格は税込みです
※おすすめの品は変更の場合もございます。

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