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10月のうまいもん/きのこ

クリタケ161105藍那g

"香り松茸、味しめじ"。そんな言葉があるくらいこの二種のキノコは、私達の食生活や日本の食文化に欠かせないものになっています。殊に松茸は、秋の味覚の代表格。この高嶺の花を一度は口にしないと冬を迎えることができないと言う人もいるくらいです。「さかばやし」の店長で、自他ともに認めるキノコの達人・幸徳伸也さんによると、「松茸を好むのは日本人ぐらい」だとか。海外では高嶺の花ではなく、むしろ軍足のような匂いと言って嫌う人が多いようです。この松茸の香りをいい匂いと思うのは、「歴史的に続く日本人の嗜好によるインプットの仕方」と教えてくれました。
 ところがそんな日本でも異変が起きており、あまりの高級品になったためか、家庭で松茸料理を作らない家が続出。そのため大学生にアンケートを取ると、松茸が好きと答えた人は1%しかいなかったそうです。これは由々しきこと、このままでは日本の食文化も絶えてしまうとばかりに無理してでも松茸を食べねばと思っているのは私だけでしょうか。…とは言っても国産は手が出しづらく、ましてや丹波産は超高級品で一般庶民には手が届かぬもの。韓国産や中国産を食べようと思っても、これまた高く、米国産やトルコ産を探さねばならぬほど。ところが外国では松の木以外にも宿るためにトルコや米国、カナダ産は肝心の香りや歯応えも変わってしまいます。やはり中国産ぐらいまでには留めておきたいものです。
 一方、"味しめじ"のフレーズが付いたしめじは、松茸ほど高嶺の花ではないために日頃から口にすることができます。昨年、「旬を楽しむ会」を「さかばやし」で催したときには、幸徳店長の提案で“しめじ”の食べ比べをし、好評を博しました。その時は、大黒しめじ(ホンシメジ)、丹波しめじ(ハタケシメジ)、ブナしめじをいただきました。
 そのうち、大黒しめじは、1999年にタカラバイオが赤玉土と大麦などの穀物粒を主成分とした菌糸瓶法で人工栽培させたもの。いわば、ホンシメジの栽培バージョンです。ホンシメジは、コナラ林や赤松林の木に菌根を作って共生するキノコで、巷にはあまり流通していません。天然のホンシメジと大黒しめじとは流石に味の差はありますが、大黒しめじなら手に入りやすいので、それを味わうことで少しはホンシメジの味に近づきたいものです。
 逆にブナしめじは、天然ものを探す方が苦労するほど、栽培ものが一般的になっています。値段が安く、クセがないので料理に用いやすく、加えて歯切れのよさやクセのない風味がウケて一般キノコ素材の代表になっています。昨年の食事会のように食べ比べをすると、その特徴がよくわかり、"味しめじ"といえど様々な違いを実感できます。
 さて、今月の「さかばやし」はキノコがテーマ。会席料理の一部にも用いますし、一品料理としてもキノコを用いて調理します。ぜひキノコの達人・幸徳店長がプロデュースし、加賀爪料理長が調理するキノコ料理を堪能してみてください。ちなみに幸徳店長のキノコの解説とともに味わうイベント「旬を楽しむ会」は、10月19日(土)19:00から行う予定です。
(フードジャーナリスト・曽我和弘)

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